Work in progress : 進行中の作業を意味し、ここでは創作の過程を公開することを指しています。
イキウメの新作「外の道」は、2020年5月28日からの公演を中止して、1年後に延期しました。創作をワーク・イン・プログレス(W.I.P)に移行し、遠回りして作品の深堀りをすることを始めました。
公演するはずだったお客様のいない劇場で、創作の途中までを記録し、作っていたものをなるべくそのままに、素材感を残したままオンラインで公開しました。
演劇が成立するための条件→ 俳優と観客がいること。
ですが、お客様がそこにいませんので、「いると成立しないもの」を探ってみよう、という意図もありました。
そのあとは、W.I.Pを観ていただいた方からのご意見や感想をフィードバックして、リクエストに応えながら、発酵していくものを公開していきました。
その中で始めたのが「金輪町(こんりんちょう)コレクション」です。これは、ほぼすべての作品の舞台になっている「金輪町」を、W.I.Pでビジュアル化してみたことがきっかけになりました。
外側に手がかりがあまりなく、時間はたくさんありましたので、ここは足もとを掘っていくことが面白そうだ、と「金輪町」の取材と調査をするイキウメ・スタディです。関わってきた作品の記憶をたどり、地図やジオラマに起こして、物語世界をWEBで展開しました。
再発見できたものを反映した「金輪町」についての上演、という流れになり、短篇・長編の一部・落語の公演を準備始めました。
全体を11作品に絞り、松岡依都美さん、瀧内公美さん、柳家三三師匠とともに、2か月の稽古場を経て、21年2月、シアターウエストで実施しました。
またもや緊急事態宣言下の東京でしたが、元気に上演・配信しました。
ご来場、ご視聴、ご参加をいただきましたお客様には厚く御礼を申し上げます。
「外の道」は、昨年W.I.Pで観ていただいたものを更地に戻してからまた始めました。
今・ここ、としか言いようのない「外の道 Ⅱ」が現れました。
お待たせしてしまいましたお客様と、この時間が刻印された作品を、ともに再生できることを願っております。
イキウメ (2021年5月追記)
「外の道」
Introduction
同級生の寺泊満と山鳥芽衣は、偶然同じ町に住んでいることを知り、二十数年ぶりの再会を果たす。
しかし二人には盛り上がるような思い出もなかった。
語り合ううちに、お互いに奇妙な問題を抱えていることが分かってくる。
寺泊はある手品師との出会いによって、世界の見え方が変わり、妻が別人のように思えてくる。
新しい目を手に入れたと自負する寺泊は、仕事でも逸脱を繰り返すようになる。
芽衣は品名に「無」と書かれた荷物を受け取ったことで日常が一変する。
無は光の届かない闇として物理的に芽衣の生活を侵食し、芽衣の過去を改変していく。
二人にとって、この世界は秩序を失いつつあった…。
イキウメの新作「外の道」、5月28日からスタートします。